平成十年


オラトリオ 響く間に間に 除夜の鐘    12月31日~1月3日    京の正月
比叡山 日ざし恵方に 移りけり 〃       〃   比叡山
元旦や のざる飛び交ふ檜皮葺 〃       〃     〃
自動車の 飾り取り合ふ 親子猿 〃       〃     〃
元旦や 風車からから 雨の中 〃       〃    琵琶湖風車村
元旦や 鵞鳥寄り来る 琵琶湖畔 〃       〃     〃
山ねむる 洞に千年 地蔵座す 〃       〃    奈良山
冬日和 苔に光悦 垣の陰 〃       〃    光悦寺
白鳥は 茜雲より 湖に入る 1月6日    彦名干拓地
卆寿の師 語る子庭の 冬の薔薇 9日    恒例 恩師を訪ふ
寒声や 選挙半年まへの宴 14日    江田五月氏 新年会
二羽の鶴 雨の中洲に 春を待つ 15日    湛井ドライブイン
書画の会 設うけし八十路 春隣 16日    墨潮会館
温泉は 塵の余熱や 厄祓い 16日    鵜飼谷温泉
門松を ふりむき駅伝 駈けぬける 〃     テレビより
山小屋の 氷柱かがやき 湖かくす 22日    日野鴛鴦
おしどりの 群れをはぐくむ 郷の老い  〃       〃
里びとの はぐくむ鴛鴦へ 岳の風 〃       〃
鴛鴦の群 のこし青鷺 松へ飛ぶ 〃       〃
風花に 模様の揺れる 園の芝 24日    後楽園
風花や 岡山城の 濠に消え 〃       〃
残雪に 日矢一瞬の 大砂丘 29日    岩井温泉
岩海苔を 採りつおしゃべり 海女の午後 〃       〃
日本海 海苔とる海女の 声高し 〃       〃
初富士を 馬の背より 見下しぬ 〃       〃
雲垂れて 彩なき里の 雪間草 2月7日~10日    山陰 浜坂付近
かもめ舞ふ 舟屋に物干す 細雪 〃      〃  伊根
  ―越前、越中、飛騨、信濃―
越中の 春一番や キャンプの夜 19日~25日      〃       栃波
カフェーも 合掌造り 雪残る 〃       〃       五箇山
シャベルカー 除雪の埋めし 鳥居掘る 〃       〃       上平村
春雪の 嶽に鉄塔 角たてて 〃       〃       白川村入り口
雪解まつ 堰堤のみな 野面積み 〃       〃       御母衣ダム
霞みつつ 妻籠の梲 朝日さす 〃       〃       妻籠
木曾の春 寝ざめの床の ひと眠り 〃       〃       目覚めの床  
日本海 岩の祠に 雪残る 〃       〃       能生 
しがらみに 返す旅路や 山笑ふ 〃       〃       赤倉山
     ―了―
妙の幕となる放水や 春のダム 3月6日    日野 鴛鴦 千屋
―中国、九州 春の放浪―
道標を 見て足まかせ 霞濃し 17日~26日      〃   吉備宮
タンカーの ゆくも止まるも 瀬戸の春 〃       〃   三原
湯あがりの 谷底深し 月朧 〃       〃   羅漢温泉
青海苔の 覆ふ干潟に 鷺の歩々 〃       〃   安浦町
人工の ゲレンデ三筋 春の山 〃       〃   芸北町
賑はひを 避けて墓場の 春一番 〃       〃   浜田
春一番 のこす夜明けの 粉糖雨 〃       〃    〃
モザイクの 漁夫立ち向ふ 春嵐 〃       〃   三里浜海岸
ごみ焼きを 背に立つ地蔵 春の海 〃       〃   阿武隅町 道の駅
支那海の 燈台おぼろ 夜明け前 〃       〃   平戸南宮浦
   ―了― 
囀りに そっとシャッター 押しにけり 31日    貝殻山のさくら
山ざくら かたへに火事の 影のこす 〃       〃
四月馬鹿 くる日もくる日も 四月馬鹿 4月1日    自宅
飛行機に 似て来し反古や 春の宵 〃      〃
春泥に 紙飛行機の 墜落す 〃      〃
赤潮を 追ふ船団の 浪高し 20日~25日    四国 明石大橋
しゃがの丘 上から下へ 日ざしけり 〃      〃  徳島月ヶ瀬温泉
新緑や 梲の町の 芝居小屋 〃      〃  脇町
岩を抱く 欅若葉の 谷深し 〃      〃  美霞洞温泉
岩の奥 その奥の奥 滝白し 〃      〃    〃
夫婦岩 分つ狭間に 風薫る 〃      〃    〃
藤の花 杉を覆ひて 天懸る 〃      〃    〃
夏霧に 鉄塔つぎつぎ 消えゆけり 〃      〃    〃
初夏や たつきに拾ふ 浜の石 5月2日~8日    東北南部 寝屋港付近
連休や 親子総出の 田植えかな 〃       〃 
子供の日 採れぬとれぬと 貝を掘る 〃       〃
吊橋を 燕飛び交ふ 露天風呂 19日    奥津神楽会
旧友と 若さ誉め合ふ 河鹿の夜 〃       〃
紫陽花に 沈む燈篭 渓の寺 6月5日    大滝山 普茶料理
石庭に 雀があそぶ 苔の花 〃       〃
石庭の 影を濃くして 苔の花 〃       〃
夕焼や 降ろして飾る 鬼瓦 〃       〃
普茶料理 囲む嫗や 雨蛙 〃       〃
撮影会 長き茶髪に 青嵐 7日    烏城撮影会
池の水 増えて水連 沈むげに  〃       〃   御名郷池
睡蓮に 触るる 爪先 橋の人 〃       〃     〃
渓谷の 賽の河原に 蛍飛ぶ 9日    大滝山の蛍を憶う
飼育婦を 親と粉ふや 鶴の雛 10日    湛井
カメラより 逃げし蜂待つ ラベンダー 12日    まきばの館
夏蝶に カメラ向けむと 人を制す 〃       〃
新聞が 誉めし土曜の 写真評 21日    写真家集団展
吊しのぶ 飾りて友と 写真展 24日    表町フォト
風鈴の 雨声に交じる 尼僧院 〃     写真に憶ひ出
香港の 灯かりきらめく 朝の虹 〃       〃
―近畿より木曽路へ霧の旅-
浜に陽を浴びをるビキニ 立ち上がる 7月5日~13日    裏泊海岸
池涼し 薄運の姫 祭られて 〃     大山赤松池
断崖を 雲下りくる キャンプかな 〃     大山峠
CDを 聞きつ比叡の 夕焼けり 〃     比叡山
観覧車 夕焼け雲を 負ひにけり 〃       〃
神官は つぶやき茅の輪 くぐりけり 〃     守山市御上宮
炎天に 近づく杖音 蔵屋敷 〃     近江商人館
花畑 問はず語りの 老女かな 〃     伊吹山
夕焼は 輝く雲の 縞模様 〃       〃
御岳の 神の碑林や 木下闇 〃     御岳
滝の音 過ぎし車を ひき戻す 〃       〃
彫刻の 群に出会ひし 御花畑 〃     美ヶ原
高原の オブゼの群れの 夕焼けり 〃       〃
次つぎに 蒸気昇りて 夏の雲 〃     王ヶ嶺山頂
稜線は アンテナ並ぶ 花畑 〃       〃
   ―了―
心経の 扇子を贈る 夏座敷 19日    辻家(勝山)訪問
法螺鳴るや 神代杉の 霧みだれ 25日    写真題 十津川 玉置神社
登山靴 締めて辿りし 霧の宮 〃       〃
オラトリオ 聴いて夜更けし 原爆忌 8月6日    レーゲンスブルグ合唱団
若者の 覇気さはやかに 書道展 15日    玉龍会展
入口の 声さはやかに 展覧会 〃       〃
黙祷の 一分間の 終戦日 〃       〃
銅版の 古刹の屋根に 鵙尖る 24日    秋の四国路 高縄時
百体の 佛陀輝やく 竹の春 〃       〃     岩屋寺
ヘルニヤに 二度無き坂や 法師蝉 〃       〃       〃
霊峯の 雲にこだはる 赤蜻蛉 〃       〃     石鎚山
朝焼けを そびらに嶽の 輝やけり 〃       〃     寒風山
秋風や 観音堂の 菊の紋 9月8日~13日    中国路 鞆
ジグザグの 波止の出島や 雲雀 〃       〃
燕去る 瀬戸の入陽の 露天風呂 〃       〃  内海大橋
山頂の 佛陀の群れに 滝白き 〃       〃  因島 白滝山頂
穴まどひ 水軍城へ 登りけり 〃       〃   〃
秋風や 塗料の剥げし 西日光 〃       〃   〃
霧の夕 漁火リズムに 乗り歌ふ 〃       〃  下関 彦島大橋 
虫しぐれ ビルの谷間に 押し出され 〃       〃  下関
また一羽 夜明けのキャンプに 鴉舞ふ 〃       〃   〃
断層の 崖に叫ぶや 天高し 〃       〃  須佐町
岩風呂に 尻のちくちく 居待月 〃       〃  匹見温泉
彼岸花 鳴らぬ口笛 吹いてみる 16日    429号線 
木の葉髪 若やぐ妻は 認めぬで 20日    自宅
台風の 迫りし窓や ミレーの絵 22日     〃
―東北への道―
百体の 石佛峠 社氏来たる 10月5日~17日      〃   湯の丸峠
留守番は 千年杉や 神無月 〃       〃   棒名神社
八甲田 碑に秋蝶の 動かざる 〃       〃   八甲田田代沼
湖の朝 背に椎の実の 音しきり 〃       〃   十和田湖キャンプ
捨て犬の 寄り来る山路 時雨けり 〃       〃   田沼湖
みちのくの 今もぴりりと 摺り大根 〃       〃   大沼
タイヤ踏む 落葉の嵩や 峠道 〃       〃   八幡平
    ―了―
薪能 面をはづせば 女人なる 19日    薪能 後楽園
秋風や またぎの里の 薬師堂 25日    東北追句 川俣温泉
つまづきし 友に手を貸す 峡紅葉 11月11日    匹見峡
駈けめぐる 街の落葉の マスゲーム 〃     倉敷 帰路
医者がよひ するも仕事や 秋深し  15日    書画寿の会
断崖の 落葉に尿る 朝の渓 16日    般窟渓
萬ごと 探す句集の 夜長かな 20日    自宅
河豚を干す 男まさりの 老女かな 30日    高知
政治家は 忘年会に 迷ひをり 12月20日    テレビより
群れなして 水面翔けゆく 落暉の鵜 22日    百間川


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