平成六年


孫娘 仔犬も加へ 去年今年    1月1日    正月はにぎやかにて
正月は 六十七歳 最後の日 〃       〃
若者に 負けじと掛けし チェンかな 2日    恩原
死の縁に 止どまる老師の 去年今年 3日    阿部氏と一丘氏見舞う
対話中 眠むる老師の 四温かな 7日    永瀬氏と一丘
七草粥 たどる記憶の 六十八  8日    自宅
整ひし 独居の老師の 部屋小春 10日    恩師誕生日
香の失せし 蝋梅夕日に よみがへる 16日    半田山植物園
工作材 見つめ夜更けの 暖房音 17日    自宅
塗って書し 書して塗り消す 夜長かな 〃      〃
心経書す 凍てし盲想 序々に熔け 18日     〃
船の窓 いづれが雪やら しぶきやら 23日    大久野島
音冴ゆる 高齢ロマンの ピアノかな 〃       〃  グルダ
寒風の 吹き抜く舞台や 観音堂 〃       〃
頬寄せて 雪に輝く 虹を見し 30日    恩原湖
冴え返る 夜更けの篆刻 指の豆 2月10日    篆刻
三寸の 雪に戸惑ふ 吉備の街 23日    初雪
春雪や 額に落ちし 葉と雫 〃      〃
写真家と 俳人集ふ 雪梅林 〃      〃
初雪や フィルム入れず 撮ってをり 〃      〃
白酒や 老女の笑みを 思ひ買ふ 3月18日    自宅
土筆むく 妻の愚痴聞く 読書かな 〃      〃
朧夜や 写経の紙の 捨てどころ 〃      〃
春雪や 信号無視に かかりけり 24日    恩原、大山
接写する 土筆の雫に 空の青 30日    賀陽町の土筆
老人と 共に散りけり 庭の花 4月10日    古松正一氏逝く
霊柩車 庭の花のせ 出でにけり 〃       〃
断れば 他に断られ 四月馬鹿 26日    自宅
老松に 懸る日輪 夕霞 28日    五重の塔 国分寺
前掛に 豌豆青き 老女かな 5月2日    叔母を訪ふ
それぞれの 憶ひたしかめ 春の墓地 3日    松本英子墓参り
愚作の句 千を超へて 春は逝く 10日    自宅
渓川に 尿れば涼し 離れ雲 20日    野呂高原
6月13日〜21日 ペルーの旅 (含写真解説、無季句)
大和には 梅空ばかり 成田発 〃     成田発 19:00
梅雨の雲 突き抜け翔てば 天は晴れ 〃       〃
みどりなき ロス空港の 椰子五本 〃     ロス発 0:10
夏霞 待ちゆく兵士の 歩々の音 〃     リマ着 0:00
キリストの 目のみ輝やく 夏ぼこり 〃     リマ カテドラル教会
教会は 観光客と 夏ぼこり 〃           〃
土器と布 飾りて夏の 天野館 〃     リマ 天野美術館
古代笛 吹いてと老女の 声涼し 〃            〃
旅ゆけば 高山病と 夏の風邪 〃     クスコ
萬年の 雪が千古を 語るかな 〃      〃
鼻すじの 目元涼しき 農夫かな 〃      〃
石垣の 旱りに金髪 乙女かな 〃     マチピチュ
雲の峯 とりでの連路 行き止まり 〃       〃
幻の 栄光しのぶ 一草樹 〃       〃
しばらくは 難攻不落の 迷路かな 〃       〃
防壘の 最古となりし 石砦 〃       〃
高山病 十二時間の 夏の汽車 〃     チチカカ湖へ
子沢山 引火の夏の 今昔 〃       〃
ユーカリの みどりの映えし ペルーかな 〃       〃
高山病 空ろに二人の 湖明かり 〃     チチカカ湖 3600米
句に籠る ホテルの窓や 夏の湖 〃       〃
夕焼けて チチカカ湖の 神秘めく 〃       〃
山高帽 氣ぐらひ乗せて 夏婦人 〃     プーノより リマ
リマ近く 眼下に夏の 雪の山 〃       〃
雨なくて 砂塵は霧と なりにけり 〃       〃
田と畑を 区切る千古の 遺跡かな        〃
スペインの 爪跡輝く ペルーかな 〃       〃
高山病 悪夢のごとし 帰国前 〃       〃
外遊の 最後を飾る 夏の寿し 〃     リマ 日秘協会
-了-
睡蓮を 揺らすは鯉か 己が眼か 7月23日    自宅
太陽に 痩せしひまわり 背を向ける 〃      〃
江戸風鈴 描く翁の 目光り 〃      〃
原爆忌 五重の塔の 夕焼けり 8月7日    吉備路
吊橋の 登り提灯 露天風呂 8日    湯原温泉
ちゃんちきと 浮かれ太鼓に 踊りの輪 〃       〃
ワイパーに まともに当たる 赤とんぼ   8月27日〜29日    飛騨高原写真会
枯れて 樹々の白骨 踊りかな  〃       〃
老女焼く 味噌味団子の 寺残暑 〃       〃
頬杖の 笑顔で語る 朝市ねぇさん 〃       〃
食さずに 芝栗飾る 茶の間かな 9月11日    自宅
卓上の 湯呑に隠れし 黒子虫 〃      〃
骨に書く 般若心経 ちちろの夜 〃      〃
藁屋より 続く竹薮 彼岸花 22日    建部
秋寒や 二匹に増えし 犬の小屋 10月1日    娘犬を連れて帰ってくる
楽毅論 筆を止めれば 鳴くちろろ 13日    自宅
霊峰に 法螺貝響く 神の留守 11月3日    石鎚山
句の友の 訃報を告げる 鵙高音 11日    角南栄四朗逝く  
神の留守 振り袖続く 塔の徑 13日    国分寺
息白く カメラ又拭く 嶽夜明け 16日    蒜山鬼面台
老写友 黄泉の風邪 持ち帰りけり 12月17日    写友退院
豪傑の 凍つる細字に 天眼鏡 24日    林原美術館


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