平成四年
正月も セーター姿で 句をひねり | 1月1日 | 無職人に計画無し |
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人面の真黒き岩の 雪帽子 | 2日 | 恩原に撮影行 |
会葬や 年賀は小声の 眼と眼かな | 4日 | 社員母の葬 |
松の内 二度の喪服に 降る小雨 | 6日 | 片野君父の葬 |
旧道に 藁屋ちらほら 小正月 | 15日 | 藤井、安井訪問 |
金色に 氷湖の風の 跡光る | 20日 | 恩原撮影会 |
病む医師へ 煎薬を焚く 寒の月 | 23日 | 友人の医師へ |
霊峯の 輝やく霧氷 拝み撮る | 24日 | 圭二霧氷展 |
石鎚の 霧氷輝やく 空の藍 | 〃 | 〃 |
歯科眼科 朝寝飛び出す 寒鴉 | 29日 | 歯科眼科よりホテルへ |
お見舞ひに 二月の旅の 写真見せ | 2月6日 | 柴田守男 |
節分草 這いつくばって 撮りにけり | 11日 | 御津天津神社 |
みつまたの 煙あちこち 山の里 | 13日 | 白賀渓谷 |
みつまたの 皮むく老女の リズム感 | 〃 | 〃 |
ロープウェー ぱっと明るき 霧氷林 | 16日〜18日 | 比良御座所岳 |
五輪祭 日の丸稱へし 春の雪 | 25日 | テレビ回想 |
車買い 独り笑ひや 山も又 | 3月3日 | キャンプカー購入決定 |
先輩の 来て又座る 春の風 | 4日 | 赤枝郁郎氏ふらりと来し |
還暦を 自作で歌ふ 春の唄 | 7日 | 青氏自作音楽会 |
春寂し 最後の下の歯 抜かれけり | 8日 | 滝歯科にて |
総入れ歯 味の名家の 春寒し | 9日 | 倉敷旅館 |
東洋蘭 絢を競はず 香りけり | 10日 | 後楽園 |
老技師や 油まみれの 春独り | 13日 | 車修理人佐藤真一 |
覇心なき 男の春の 朝寝かな | 14日 | 最近よく寝る |
磨り減りし 石段光る 春の雨 | 16日 | 一畑薬師 |
編み物も 食事もテレビも 春炬燵 | 19日 | 自宅 |
春の評 鋭き老女の 幼な顔 | 25日 | 青木、桝本遺作展 |
亀鳴くや 写真は全部 不出来なり | 29日 | 亀鳴くに寄せて |
会社捨て 趣味に生きむと 四月馬鹿 | 4月1日 | 本社より株金入金 |
蕗の薹 息吹きひろげる 青い空 | 5日 | 用瀬雛流し |
流し雛 持つ幼な子の 長き袖 | 〃 | 〃 |
流れゆく 雛は小雨の 岩なぞり | 〃 | 〃 |
幼な子が 親の厄雛流しけり | 〃 | 〃 |
懐より 炎燃え出て 雛焼かる | 〃 | 〃 |
満開の 醍醐ざくらは 瓦斯の中 | 20日 | 落合醍醐ざくら |
春雨や 田舎料理の 味自慢 | 〃 | 〃 |
旧友の 愚痴聞く春の 茶そばかな | 20日 | 写真展に旧友来 |
春を撮る 老人クラブの カメラマン | 23日 | RSKロックガーデン |
若者に 春の写術を 説きにけり | 27日 | 入会者と語る |
春の展 期待裏切る モネ、ゴーギャン | 28日 | 倉敷市美術展 |
脚なくも 五感完備と 説く春日 | 28日 | 倉敷病院の友に |
中国の 山地に小さき 水芭蕉 | 30日 | 峰山レクセンター |
滝七つ 重なりしぶく 風薫る | 〃 | 〃 七種滝 |
五月晴れ 服買ふ孫の 誕生日 | 5月3日 | 孫に服は初めて |
鎖岳 緑に歌ひ 子等登る | 18日 | 瓶ヶ森写真会 |
新緑に 車のきしむ 嶽の尾根 | 〃 | 〃 |
病室の 窓に五月の 光あり | 20日 | 女の友を川崎に見舞 |
病床の 老女の饒舌 雨五月 | 22日 | 松本氏を見舞う |
叔父の 絵を飾る故郷の 夏日ざし | 30日 | 叔母を訪ねる |
何事も 良き事とせり 梅雨じめり | 6月4日〜8日 | 熱海、富士、伊豆 |
おぼろ富士 競いて撮りぬ 老夫婦 | 〃 | 〃 |
たらの芽を 採り天麩羅の キャンプかな | 12日 | 大佐山にキャンプ |
崖青葉 紅葉の頃を 思ひけり | 〃 | 〃 |
あじさいや 山の思ひ出 持ち帰る | 17日 | 遥照山 藤波池 |
しがらみを 逃れしキャンプ 海の音 | 19日 | 出崎海岸キャンプ |
庭隅の 陰から陰へ 糸とんぼ | 24日 | 粟井温泉足守荘 |
蝶々も 来てゐる庭の 糸蜻蛉 | 〃 | 〃 |
己が影 踏まへ去りゆく あめんぼう | 26日 | 小串鉾立 |
老人会 木陰求めて 句をひねる | 7月9日 | 吉備津神社 |
老夫婦 連れゆく瀬戸の 夏霞 | 10日 | 阿部夫妻と児島へ |
雷光の 雲垂れビルに 近づけり | 〃 | 〃 |
夏霞 嶽に句作の 竹の縁 | 10日 | 瓶ヶ森カメラテスト |
女湯の 音を聴きつつ 滝見風呂 | 〃 | 〃 |
打ち寄せる 浜に浮き輪の ただ一つ | 20日 | 孫と出崎海岸海水浴場 |
せせらぎに 蝉の奏でる 古戦場 | 22日 | 砂川公園に孫と |
釣り人に 瀬波輝やく 夏霞 | 25日 | おもつぼ湿原 |
炎天の 沼に妻呼ぶ 老写友 | 〃 | 〃 |
別荘の 雨戸開ければ 蝉しぐれ | 29日 | 牛窓吟行黄別荘 |
樹々茂り 海の見えざる 海の家 | 〃 | 〃 |
モスクワ、ペテルスブルグとバルトの旅 | ||
夏風に 饒舌手振りの 添乗員 | 8月8日〜16日 | 〃 ホテルフジタ |
夏雲の 切れ目に本土を 眺めけり | 〃 | 〃 機上 |
ソ連機の 美人揃へて 夏の空 | 〃 | 〃 〃 |
ロケット碑 夏の夕陽を 突き刺せり | 〃 | 〃 ホテルコスモ |
見るからに これぞ乞食ぞ 汗の出る | 〃 | 〃 〃 |
クレムリン 市民の汗を 振り向かず | 〃 | 〃 クレムリン宮 |
夏空に 砲を向けたる ナポレオン | 〃 | 〃 〃 |
饒舌に まどふ男の 大旱り | 〃 | 〃 モスクワの街角 |
売れずとも 路傍に並べて 夏惜しむ | 〃 | 〃 レーニンの丘 |
ひでり中 振り向く人なき 処刑台 | 〃 | 〃 赤の広場 |
駅晩夏 抱かれてほじる 鼻の穴 | 〃 | 〃 モスクワ駅 |
難民と 粉ふ人群れ 夏の駅 | 〃 | 〃 〃 |
トイレ臭 にはかに臭き 夏の汽車 | 〃 | 〃 まだまだ車中 |
街人に 夏の草花 添へて撮る | 〃 | 〃 エストニア、タリンのホテル |
民主化に ピエトロ何処向く 夏の風 | 〃 | 〃 タリン展望の丘 |
バルト海 卯波に石庭 見つけたり | 〃 | 〃 タリン市 |
エストニア ダンスにスラブの 夏の風 | 〃 | 〃 〃 |
鐘楼の とんがり屋根の 夕焼けり | 〃 | 〃 〃 |
ヌーディストの 続きの浜に 風涼し | 〃 | 〃 バスにてラトビアのリガへ |
母を追ふ 児の影長し 秋バルト | 〃 | 〃 〃 |
検査官 写真撮ってと 汗を拭く | 〃 | 〃 〃 |
船倉に 擬せしレストや 汗の酒 | 〃 | 〃 リガ、ラトビア料理 |
夕焼けに 得意なトンガリ 屋根の影 | 〃 | 〃 首都 リガの夕 |
朝霧に 会釈深々 忠魂碑 | 〃 | 〃 リガ市街 |
ブー、ワン、ニャン、ケッコの碑前に 夏はゆく | 〃 | 〃 〃 |
風見鶏 鳶旋回の 夏の空 | 〃 | 〃 〃 |
子供の眼 市場の熱気を 見つめをり | 〃 | 〃 〃 |
夏の花 買ふ老人の 胸算用 | 〃 | 〃 〃 |
時代村 老女独りの 夏の家 | 〃 | 〃 時代村博物館 |
朝日出て 墨絵となりし 霧の森 | 〃 | 〃 SLでペテルスブルグへ |
アベックを 横目に過ぎる 秋日ざし | 〃 | 〃 ペテルスブルグ駅 |
水兵に 親しく秋の 老女かな | 〃 | 〃 ペテルスブルグ観光 巡洋艦オーロラ |
プーシキン 右手を広げ 秋を呼ぶ | 〃 | 〃 プーシキン広場 |
夕焼けに 憩ふかもめの バルト海 | 〃 | 〃 ホテル裏 バルト海 |
古楽器に 合はす噴水 邸の園 | 〃 | 〃 夏の宮殿 |
人ごみに 疲れ果てたる 芸の秋 | 〃 | 〃 エルミタージュ美術館 |
朝霧を 吸ひ込むゼットの 吹き口 | 〃 | 〃 七時フライト モスクワへ |
秋風に モザイク古し 地下鉄道 | 〃 | 〃 モスクワ市内 地下鉄 |
老人の 小さな希望 くるみ売る | 〃 | 〃 〃 地下鉄出入口 |
秋日和 真白き館の 修道女 | 〃 | 〃 〃 修道院 |
結婚式の メッカや秋の 修道院 | 〃 | 〃 〃 〃 |
フィルムも 気力も尽きし 秋の旅 | 〃 | 〃 帰国機上 |
-了- | ||
名勝を 糧に客呼ぶ 残暑かな | 22日〜26日 | 写真大会 御岳昇仙峡 |
秋風に 峠のダリヤ 富士を待つ | 〃 | 〃 忍野二重曲峠 |
遠富士を 背に撮る桔梗の 露光る | 〃 | 〃 富士五湖 |
佛壇の 前の朝餉や 秋の宿 | 〃 | 〃 忍野民宿 |
鈴虫の 鳴くは何処ぞ 庭明り | 〃 | 〃 旅亭北の丸 |
植物も 弱肉強食 霧伊吹 | 〃 | 〃 伊吹山 |
鈴虫の 鳴き細りゆく 部屋の隅 | 27日 | 自宅 |
人気なく 園児の帽子に 秋日ざし | 9月5日 | 建部町 |
隠岐の島 牛馬糞尿の 秋匂ふ | 12日〜15日 | 隠岐前島 |
車寄り 牛堂々と 島の秋 | 〃 | 知不里赤はげ山 |
朝焼けの 丘に入陽を 撮りにけり | 〃 | 〃 |
草深き 小雨の畦の 萬珠沙華 | 25日 | 赤坂、賀陽、大井 |
本堂に 続く石段 萬珠沙華 | 〃 | 〃 大井安養寺 |
まんじゅしゃげ 写真撮る背に 傘雫 | 〃 | 〃 賀陽 |
霧生駒 煙の見えぬ 浪速かな | 29日 | 生駒山キャンプ |
秋の展 明治生まれの 筆運び | 10月2日 | 明治書道の会 |
退職者の 宴はなやぐ マスカット | 6日 | 泉水退職者の宴 |
秋祭り 軽々稚児を 抱き登る | 24日〜25日 | 賀陽八幡神社 |
秋祭り 酒盛る円座の 里訛り | 〃 | 〃 |
名水の 田舎豆腐や 秋炬燵 | 29日 | 談笑豆腐の会 |
洋琴の 音に葡萄の 房光る | 30日 | 神埼葡萄園の音楽会 |
画家の筆 撮るより早く 秋描く | 11月3日 | 無明谷写生 |
せせらぎに 澱む紅葉や 銚子峡 | 6日 | 小豆島 三浦 |
経合唱 紅葉の朱堂に 響きけり | 〃 | 〃 石門 |
焼物を 並べ香焚く 秋茶房 | 〃 | 〃 土庄 |
秋の瀬戸 日矢は条なし 船を追ふ | 〃 | 〃 戻り船 |
老書師の 脚こきこきと 街落葉 | 22日 | 自宅 |
神無月 無神論者の 七五三 | 29日〜12月1日 | 奈良天益寺泊 |
近づきつ 朝日条なす 霧の時雨 | 〃 | 〃 |
かぎろひに 古寺を護りて 僧独り | 〃 | 〃 |
若者と 歌ふも修行 古寺の秋 | 〃 | 〃 |
古寺護り 薬茶もみをる 僧の秋 | 〃 | 〃 |
神佛で 古刹にぎはふ 紅葉かな | 〃 | 〃 |
秋の展 作品よりも 椅子目立つ | 〃 | 〃 入江写真美術館 |
老夫婦を 連れゆく四国路 瀬戸小春 | 12月4日 | 猪熊美術館 |
友の死期 迫りし院の 小春かな | 5日 | 松本女史入院長し |
人気なき 高原都市の 時雨かな | 7日 | 吉備高原都市 |
饒舌の 駐車違反や 時雨けり | 10日 | 亀井看板店 |
車庫に 踏む枯葉一枚 己が音 | 14日 | 太田計理事務所 |
古寺に 津軽三味聴く 鴨の鍋 | 26日 | 豆腐の会 安禅寺 |
冬ざれや 御見舞い悲報と なりにけり | 〃 | 松本女史逝く |
良き事の 多き除日の カップラーメン | 31日 | 自宅 |
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