平成十六年


肉断ちの 卒中鯉で 治るげに   1月    湖葉会 定例会
街の丘 目ざす小雪の 紅き薔薇  
デパートの 階段リハビリ 師走かな
山道の 町へひと筋 冬の靄
ランドセル 並びし寒の 地蔵小屋
苔の岩 阿弥陀に似たる 冬至かな 
羅漢寺の 阿吽の子虎 凍ててをり
杭のごと 羅漢つつ立つ 霜柱
卒中や 誘いに来たる 雪女
生一本 小雪にふわふわ 川原の湯
誕生日 妻と土佐路の 去年今年
鬼やらひ 追いかけられぬ 鬼もゐる 2月    湖葉会 定例会
氷紋の 彩移りゆく 湖の夕
春雪や 由緒あり気な 田舎寺
春雪や 車えんこし 渓を撮る
竹鉄砲 弾となりたる 竜の玉
でるたびに 覗きこみゆく 牡丹の芽
用水に つつ立つ小鷺 水ぬるむ
冬晴れ門 雲の気になる 手のカメラ
雪の嶽 カメラの友と 出会ひけり
四月の空 晴れわたる 旭川
枯木かと 思へば小鳥 鳴きにけり
春泥や 迷ひてゐたる 羅漢寺
強東風の 音の気になる 筆の先 3月    湖葉会 定例会 
白魚に 亡き母思ふ 夕餉かな
戸開けば さっく一吹き 冴え返る
駐車場 置き場に迷ふ 若芽かな
背を丸め 作る苗床 妻の庭
垣根越し 隣家の山朱萸 撮りにけり
白梅に 継ぎし紅梅 苗の映ゆ
鳥雲に 無事を祈りぬ 夕茜
三月に 入るや手入れの キャンプカー 
薄氷を 忘れて通る 街明り
新婚は 仮装の雛 人力車
カメラ手に 思ひめぐらす 花曇り 4月    湖葉会 定例会
街角で エンジン故障 四月馬鹿
雲乗るる 鰊館の 今昔
みどり立つ 宮の石段 朝の靄
鳥達の 飛びかふ梢 花吹雪
昇る陽に 靄の中たる 花の丘
残り花 点描絵画の ごと映ゆる
新しき 並ぶ店舗や 花笩
八重ざくら 今を盛りに 川の町
プラスチック どちらが本真の 牡丹かな  5月    湖葉会 定例会
セフ摘みて サラダとなりし 花筏
朝靄に 群れ咲く藤や 嶽の湖
橅の森 一夜でかはる 若菜かな
ケアハウス 子供に還る 子供の日
青梅の 香る山里 しばし佇つ
夏来たる あわて手入れの キャンプカー
鯉程に 金魚大きく なりにけり
烏賊釣りや 帰港の前に 捌きけり
誘はれて 迷ひ込んだる 夏の山
子等の押す 薔薇に触れゆく 車椅子 6月    湖葉会 定例会
小判草 廃れ花園に ささやける
いちめんの ねじ花に木の 陰動く
来展の 友の墨跡 風薫る
歳月を 重ねし羅漢 沙羅の庭
古池に 動くは螻蛄か 羅漢寺
菖蒲苑 筆あとなぞる 画家の髭
水連や 指に吸ひつく 鯉のゐて
オパールの ごこく紫陽花 陽を透かす
ほたるぶくろ 雨の重さに 耐えてをり
―第2回圭二展 添句― 7月    湖葉会 定例会
回廊を 登り降りの 春の風
遍路笠 見つめどうしの ぬひぐるみ
子鯨を 視点に動く 春の蛸
朝靄の さくらつつじの 浄土かな
古き過去 あらはに花の 盛りなり
渋滞を つくる桜と なってをり
友逝けり つつじが丘の 朝の靄
藤棚と なりて枯松 栄えにけり
子等の押す 薔薇に触れゆく 車椅子
我が庭に 嶽を忘れぬ えびねらん
奥飛騨の 流れ音なく 蝉しぐれ
花園を 思ひの文字と なしにけり
乗鞍の 森よりかすか 朝の蝉
奥飛騨の 観光牧場 風光る
牛の声 遠くに蝦夷の 花畑
白樺の 影を濃くして 湖の涼し
裏見滝 洞の明りの しぶきかな
八方の 尾根に輝く 霧の玉
朝焼けの 橋杭岩の 佛かな
ビール缶 集めて案山子と なりにけり
甲斐駒や 霧にまぎれし 妻の声
若者は 帰らぬ色なき 風ばかり
君知るや 白川郷の 朝の霧
断崖へ 迫る紅葉や 伯耆冨士
白樺の 映えにし湖の 入日かな
閉ざす店 目立ちて来たる 師走かな
新雪の 尾根に林の 陰淡し
思案する 恩原湖の 雪の穴
―了―
毒蛾では なきかと妻の 居場所かな 8月    湖葉会 定例会
箒木で 撫で掃く老や 千枚田
町工場 裏の西瓜の 香の甘き
夕立や 先をゆずりし 脳卒中
門口で 考へてゐる 日の盛り
青林檎 一円玉で つかみ取り
硯洗ひ 円で鼠を 描く僧
十万年 変わらぬ蟻の 土つくり
百日草 目をひらくころと なりにけり
亡き叔父を 蜻蛉とよびて 老いにけり
みみず鳴き 五輪の銀が 金となる 9月    湖葉会 定例会
バテレンの 教へ聞きをり みみず鳴く
改革や 総理みみず 鳴くを待つ
みみず鳴く 撮れば傑作 ばかりなり
朝起きの 全身麻痺や みみず鳴く
みみず鳴き 名句つぎつぎ 湧き出ずる
おみなへし 裏の畑に 嶽思ふ
おみなへし とりのこされし おとこへし
朝焼けの 黄金のしぶき 鷺翔てり
光芒の 渚奇岩の 入陽かな
秋入陽 奇岩そびらに 輝やける
老松を 起点に宮居の 彼岸花  10月    湖葉会 定例会
ひがん花 廃れ藁屋に 映えてをり
石垣の 映ゆる白壁 ひがんばな
駅までは 田舎道なり 秋ざくら
断崖は 舟屋のそびら 天高し
稲妻の 音あるごとく 北の山
同衾の 犬のおもらし 朝の寒む
ねこじゃらし 揺れて音なく 入陽かな
瓦斯銃の なくなる田舎 稲雀
黄落や 悟るがごとき 石佛 11月    湖葉会 定例会
過去未来 今を大事に 秋はゆく
山茶花を 植えにし友を 思ひをり
庭草に 妻の笠さす 時雨かな
松手入れ 老いし庭師の 鋏音
リハビリに 拝んで励んでをりぬ 神無月
断崖の 尾根駈けめぐる 小六月
廃屋の 柿の紅葉 夕映えり
散る柳子の すり抜ける 美観地区
野地菊の ままごと遊び 隣の娘
短日の 瀬戸の入陽や 宿近し 12月    湖葉会 定例会
岩肌に 無数の観音 風師走
年の暮れ 撮りまくりをる 八十路前
出席を 忘れてゐたる 年忘れ
初めての 風邪の予防や 八十路前
白浪や 磯牡蠣を採る 鉤の音
することの 多くを忘れし 師走かな
枯れ尾花 見上げてをりぬ 野面積
八十路前 足るを知りつつ 十二月
陽だまりの 枯れ木の陰や 念佛寺


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