平成十三年


冬薔薇 ほんのり宿場の 宮居かな    1月    湖葉会 定例会
古りし屋に 友は独りの 小春かな      〃  
峡の湯に 独り晦日の オラトリオ      〃
大晦日 歌と踊りと オラトリオ      〃
恵方道 千体佛を 折り返へす      〃
元旦や 羅漢は崖に 貌さらす      〃
小雪舞ひ 峡の奥なる 水の音      〃
風花や 因幡の宿の 牡丹鍋      〃
正月も うつらうつらの 老写友      〃
年賀して 思ひがけなき 師の土産 2月    湖葉会 定例会
入院の 嫗と句を練る 冬日ざし      〃
老書家の 筆の運びや 福寿草      〃
横たはる 古木ほんのり 黄水仙      〃
逆光の 蝋梅の影 しかと撮る      〃
春寒や 互いにカメラを 覗き合ふ      〃
蕗の薹 雲の行方に 出でにけり      〃
薄氷に ゆるりゆるりと 後車輪      〃
我が猫は 恋を知らざる 机上かな      〃
用ヶ瀬の 雛の印象 雪二月 3月    湖葉会 定例会
班雪 砂丘に鉛の 海迫る        〃
犬のゐて 動かぬ灯の 海猫の群      〃
観光船 音なき渚の 春時雨      〃
キャンプカー 目ざめて跳ねる 掌の霰       〃
春雪の 木陰踏みゆく 薬師堂      〃
岩落暉 鳶たちにけり 春の海        〃
とりどりの 並ぶクレン車 山笑ふ      〃
電線の 小鳥朧に 入陽かな      〃
老桜の 一部ふくらむ 牧水家 4月    湖葉会 定例会
菜畑に 空缶案山子の 鳴るごとし      〃
散りいそぐ 花の日向の 美術館      〃
吊橋や 水なき岩の 苔の花      〃
桜島 椰子の並木に 霞みけり      〃
春時雨 霧島宮の 暮れなずむ      〃
つつじ散る 薩摩隼人が 磯庭園      〃
曲水に みつばつつじの こぼれけり      〃
曲水や 隼人が庭に 散るつつじ      〃
足早やの 人声逝く 春の雨      〃
春雨の 人声まれや 磯庭園      〃
春雨や あたり人なき 磯の園      〃
嶽と湖の 蒼をそびらに 山ざくら      〃
風光る 芭蕉の映えし 湖の夕      〃
戯れる 犬の飛沫や 湖ゆるむ      〃
芽吹きたる 花梨大樹の 雀たち      〃
春朝や 思ひ出したる 目玉やき      〃
惜春や 友を連れゆく ケアハウス 5月    湖葉会 定例会
異常気象 さくら躑躅と みもざ咲く      〃
山ざくら 杖を頼りの 友を連れ      〃
光る湖 残す桜の 苔の幹      〃
華やげる 躑躅の丘の 野立てかな      〃
囀りや 素麺流しの 小屋廃れ      〃
展覧会 囀るごとき 木彫りの鳥      〃
リハビリや 杜鵑花の道を 折り返す      〃
温泉の 窓に若葉の光り 溢れけり      〃
大吟醸 道の若葉の 日ざしかな 6月    湖葉会 定例会 
さざ波に しだるる藤や 小白鳥      〃   
街路樹の 黷フ緑 駆け抜ける      〃
薫風や 歌声洩るる ケアハウス      〃
断崖の 洞の不動 滝しぶき      〃
赤い橋 不動の洞 滝しぶき      〃
七人の 小人に猫の チューリップ      〃
睡眼の 窓にゆるるは 七段花      〃
老鶯や 小鳥の森を 子等駈ける      〃
溝さらへ 昼餉は太き 握り飯      〃
セーターを 出したり入れたり 更衣      〃
螻蛄鳴くや グループ一つ 抜け出しぬ 7月    湖葉会 定例会
ペンションの 屋根にかぶさる 山ぼうし      〃
紫陽花や 伯耆大山 瓦斯の中      〃
夏草を サラダに盛りし 湖の宿      〃
ペンションの サラダに蕗の ワイン漬け      〃
梅雨雲の 切れ目の青き 日本海      〃
過ぎてゆく 山紫陽花の 彩蒼し      〃
梅雨晴れや 白く残せし 岳の蒼      〃
ペンションの コーヒー香り 岩清水      〃
カルストの 煙る高原 半夏生      〃
黒牛の 瓦斯のカルスト 半夏生      〃
山頂の 茅の輪にぎはふ 朝の靄 8月    湖葉会 定例会
眼下より 昇る太陽 夏の霧      〃
藍と茶の 縞の岩壁 雲の峯      〃
後楽園 眼で聞く蓮の 浄土かな      〃
大賀蓮 聞き耳立てる カメラ陣      〃
路上より 叢に放りし 蝉骸      〃
車椅子 手だけで踊る 炭坑節      〃
セスナ飛ぶ グランドキャニオン 大旱り      〃
梧桐の ゆらぐ葉陰や 露天風呂      〃
梧桐の 老樹の中より 青い鳥      〃
台風や 鴉鳴き去る 茜雲 9月    湖葉会 定例会
回廊の 鈴の親子や 法師蝉      〃
幾度も 闇に秋の蚊 打ちにけり      〃
秋の蚊を 払ひはらひて 闇の中      〃
川蝦の 夜振りの記憶 城明り      〃
陶蛙 こちら向きたる 箱の庭      〃
畦径の 緋なるカンナや 道祖神      〃
朝顔に 思ひ出したる 女の子      〃
踊り方 異なる男女の 小島かな      〃
蜩や 靄薄れゆく 嵯峨野かな      〃
電球に 当たり迷ひし げんごろう      〃
彼岸花 毎年同じ 籔で撮る 10月    湖葉会 定例会
飛行雲 夕焼け雲と なりにけり      〃
人気なき 木馬のきしむ 秋の風        〃
わが家に 入るを拒む 芒かな      〃
好きな娘の 飛び込み来たる 台風禍      〃
台風の 出水一気に 家の中      〃
裏庭に 八重咲きもあり 貴船菊      〃
回復を 願ふ窓辺や 月淡し      〃
会う度に 蜻蛉の叔父と 言はれおり      〃
耳鳴りを 虫と紛ひし 句作かな      〃
朝霧を つぎつき突き抜け 漁船出ず      〃
キリストと イスラム争う 神の留守 11月    湖葉会 定例会
神佛を 会祀の宮の 神無月      〃
柿たわわ 映えし空居の 友の家      〃
ヘルパーの 事に追われて 残る虫      〃
招かれざる 客を迎へる 穴まどひ      〃
はじめての 自動車事故の 秋思かな      〃
鳥の糞 露でフロント ガラス拭く      〃
街路樹に しのぶ毎年 嶽紅葉      〃
虫喰ひの 柿の紅葉を 見つめをり 12月    湖葉会 定例会
立並ぶ 巨岩のオブゼに 冬紅葉      〃
渓流の 苔に落ち葉の 散り始めし      〃
飛石の 輝く流れ 神渡し      〃
牡蠣筏 黄金の波の 中の舟      〃
陸橋の 小春洩れゆく 老女かな      〃
実の目に 勝るガラスや 帰り花      〃
燈篭の 擬宝珠に揺れる 冬紅葉      〃
帰り花 友合唱の 中にゐて      〃
半眼の 座禅の僧や 冬の鵙      〃
紅葉谷 野猿と記念の 写真かな      〃
落葉ふる 車の屋根の 親子猿      〃
源流の 紅葉に渕の 小魚かな      〃
冬枯れの 紫陽映ゆる 夕陽ざし      〃


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